Filed under: スペシャル — admin @ 15:00:29

◇新作『音の城♪音の海』について

S
新作は今月公開の『音の城♪音の海』ですね。
「音遊びの会」を取材対象に選んだ理由は?

H
この「音遊びの会」は神戸大学に集まって、療法を目的とするというより、
知的障害者と療法士や即興演奏家が新しい音楽を作ろうという試みで始まった会なんです。
まずそのコンセプトに興味がありましたね。
自分の中で自然に関心が生まれて取材の申し込みをしました。
ちょうど会を立ち上げる時だったので、比較的すんなり受け入れられてOKが出ました。

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(C)アップビートビジョン

S
最初の取材の印象は?

H
ちょうど「音遊びの会」の活動が始まる日だったので、
自己紹介があってワークショップが始まって・・・。
そこで、音楽家と子供たちがワークショップをやるのを見てこれはおもしろいな、と。

S
一番最初に「撮りたい」と惹きつけられた瞬間は?

H
やっぱり子供たちですね。色々な個性がある人たちなので一緒にいて楽しいです。

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S
取材を続けていく中で、作品のゴールはすんなり見えていたのですか?

H
いや、正直本当にどうなるのかな、どうしようかなというか・・・。
ワークショップは継続していくんですけど、しばらくは全く進歩を感じられない状況で、
これで最終的にお客さんを入れた公演なんてできるんだろうかと思いました。
毎回神戸まで交通費をかけて通っていたんですけど、
撮影をお願いしていた人に「服部君を取材した方が面白いよ」と言われたりして。(笑)

S
(笑)。どのくらい通ったんですか?

H
月にだいたい2回くらい隔週で通って・・・
2005年に撮影を始めて結局半年間くらい続けましたね。

S
そんな中、半年やっても演奏には進歩がないと・・・。

H
はい。ずっと撮影をしてても変化が見えなかった。
でも、それは自分が気付かなかっただけで、
いろんな微妙な部分で変化していることはあると思いました。
ただ、それを記録映画として表現するのもまた難しいというか、
撮り方が分からなかったですね、その時は。

S
被写体としては面白くても変化がないと映画としてはつらいですよね?

H
「このままでは映画にはできないかな」とは思いましたね。

S
メンバーの誰かひとりに焦点を当てて取材する、ということは考えましたか?

H
はい、それはやっぱり迷いましたね。ひとりに焦点を当てて追いかけて、
インタビューを撮っていったら作品としてはできると思うんですけど。
でも、それは今回の企画の時点でやりたかったことではなかったですし、
最終的に自分のやりたいこととは違うと思いました。

S
子供たちに対する接し方も試行錯誤したようですね。

H
実は最初、子供たちとの距離を縮めようと思ってインタビューをしたんですが
コミュニケーションがとれなかったので・・・。
その後も色々と引き出すために何度かインタビューを試みたんですけど、
最終的には使えなかったんです。浮いちゃう部分もあったんですよね。

S
実際、子供たちとの関係性はどのように変わっていったんですか?

H
ずっとそばにいることで信頼関係が生まれてくるので、
近くでカメラを回していてもあまり気にしないようになったり、
カメラを回していない時は一緒に遊んだり、そういう関係の変化はありました。
ただ、東京から通っているのでそこまで親しい関係にはなれませんでした。
たまに行くお兄さんくらいの感じだったので、
ほどよい距離をたもちつつ仲は悪くない感じでした。

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(C)アップビートビジョン

S
メンバー同士の対話は? 議論していたシーンもありましたけど・・・

H
初期の頃は、ミュージシャンや会の方や保護者の方との活発な対話がありました。
メールや電話で議論することもありました。そういうのも編集に入れたら面白いかなと思って、
一度メールを全部打ち出してインサートする編集もしてみたんですけど、最終的にはそういう
こちらの編集意図があまり出ないほうが作品としては合っているかなと思ってカットしました。

S
大友(良英)さんが途中からリーダー的な音楽のお兄さんで仕切っているのを見て、
まさに適役というか。

H
仕切りつつも、仕切られてしまうといったところですね。
映画としては、大友さんがいなかったら全く別のアプローチになったかもしれないですね。

S
一番最初に大友さんがちょっと引いて全体を捉えているところから、
自分の立ち位置を決めて、仕切って、それにちゃんと子供たちが応えて・・・
大友さんのドキュメンタリーとして、とてもいいと思いました。(笑)
つい、大友さんを見ちゃうんですよ。(笑)

H
なるほど。

◇「音の海」公演時の感動

S
自分の感覚として、これが映画として「いける!」と思ったのは?

H
それは最後の「音の海」の公演の時でしたね。
生で感じていてやはり驚きでしたね。

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(C)アップビートビジョン

S
立派なホールでお客さんもたくさんいて、子供たちがステージで即興演奏するという・・・
すばらしい公演の様子が撮れていますよね。まさにセッションが生まれている。

H
これまでのワークショップの経過からみて、
自分の中にあった「ある程度、こういうふうになるのでは?」という予想を超えていたので、
撮りながら興奮していましたね。

S
確かに、感動的でしたね。
ぜひ大きなスクリーンでエネルギーを感じてもらいたいですよね。

H
はい。この公演の時の音は劇場の音響でよく聴こえるような編集をしているので、
ぜひ映画館で観て聴いてほしいですね。

◇苦労を重ねた編集作業

S
ところで、編集作業はどうでしたか?

H
編集も非常に苦労しました。
やっているうちにまったくわからなくなってしまって。

S
それはどの辺が?

H
「音の城」と「音の海」という2つの公演を時系列で並べて見せる記録性を優先させるか、
「音の海」をクライマックスに持ってきて、そこにいきつくまでの話を緩やかに想像させるような
ストーリー作りにするか・・・という判断が難しかったですね。
自分の中で客観性がなくなっていって、(シロウズメンバーの)押田さんや斉藤さんに
無理言って見てもらって・・・。

―(服部監督とは映画美学校の同期でもある斉藤が登場)―

S
その時に見た作品はどんな印象だった?

斉藤
最初、「これを私は1時間半見るんですか?何が何だか分からない」っていう。(笑)
行われていることはわかるけど、全部それを撮ったままぶつけている感じで。
すごいインパクトは強かったんですよ。
でも、見ている方が考えて考えて見ないといけない映画だったんで。
完成版はそれから少し説明を加えて、こっちに子供の変化や大きな流れのイメージを
与えてくれるようになっていて。

H
お二人には明確なアドバイスをもらって。感謝してます。(笑)

S
(笑)。

◇新たな試みの上映会&ミニライブも実施

S
いよいよ5月29(土)渋谷アップリンクで公開ですね。
“上映中おしゃべりOKの「にぎやか鑑賞会」開催予定!”ということですが。

H
これは、上映中に声を出す子供たちとも一緒に映画を見たいなと思って発案しました。
あとはお子様連れだとなかなか劇場に来られないこともあるので、
親子でも来やすいように。劇場さんも好意的でした。

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(C)アップビートビジョン

S
日にちは決まっていますか?

H
上映期間中、平日に一日一回やろうと思います。
色んな人と一緒に観て、観賞中の雰囲気も含めて楽しんでもらって、
ワイワイできればいいな、と。

S
特に観てほしい方は?

H
小さい子供のお父さんお母さん、知的な障害を持っている方や家族の方、
それから、即興演奏に興味がある方や映画と音楽が好きな人には観てもらいたいです。
面白い映画になっていますので。

S
「音遊びの会」の音楽については?

H
即興演奏なので、ぜひ彼らの公演もライブで聴いてみてほしいなと思います。
映画公開中はアップリンクの劇場内でのミニライブも予定していますし、
神戸と連動して「音遊びの会」のライブが決定しています。

S
それは楽しみなイベントですね。

◇服部作品について

S
さて、『City Lights』と『音の城♪音の海』の2作品に共通することですけど、
ナレーションは入れたくないんですか?

H
ナレーションを入れてしまうと作り手の顔がでてしまうので、そうはしたくなくて。
もちろん編集しているので虚構なんですが、客観性を出しておいて、
そういう客観性みたいなところを前提として見ていただきたいなと。
ナレーションを入れるとすると全部の編集が変わってくると思うんですよね。

S
ええ。
自分の声も極力入れないようにしてますね。

H
そうですね。それもあんまりしたくなかったですね。
もちろん編集のやり方でこちらが提示して演出している部分もあるんですけど。

S
フレデリック・ワイズマンがやりたいのかな、と思ったんですけど。

H
ああ、ワイズマンはやっぱり意識してますね。
ただ、全然ああいう時間の流れというのは出せていないですけど。

S
あれはなかなかできない。でも、対象との距離感は、ちょっと意識しているのかな、と。
そんな気がしました。(笑)

H
そうですね。ああいう、特定の人物にフォーカスを合わせるのではなくて、
団体だったり、街だったり「テーマ」を撮ることに自分も興味があります。
群像劇ではないですけど、団体の中にもそれぞれの世界観があって、
それが対話してぶつかったり、いろいろな価値観が同じ画面の中であるというのが面白いなと。
『City Light』の時もそうでしたけど、個人に焦点を当てずに
複数の人が色々な意見を言い合うところを撮りたいと思っていて、
それをある程度予測して取材の申し込みをしました。

S
そういうことに興味があるのはどうして?

H
自分のなかでいろいろな価値観を知りたいし、自分にない感覚を知りたいので。
目が見えない人の世界や音に対する感覚は自分にないものですし、
音遊びの会のメンバーの世界観はそれぞれまったく違うんだろうと。
想像しかできないですけど、そういうものはどういうことかという好奇心もあります。
S
なるほど。

H
世界観や生き方を深く探るためには色々な価値観にぶつかった方が、
自分も変わると思います。だから、そういうことに興味がありますね。

S
ところで、監督は身長が高いですけど、それってドキュメンタリーを撮る上でどうですか?

H
マイナスです。(笑)
まずカメラの目線が高くなっちゃうし、撮られる側もたぶん大きいと
意識しちゃう部分もあると思うんですよね。
そういう意味では隠れている方がいいのかなと思います。別の人に撮ってもらって。(笑)

S
今後の活動は?

H
ちょうど今、ある商店街の企画で映画を作ろうというプロジェクトがありまして。
ドキュメンタリーを交えたフィクションにしようと思っているんですけど、
その商店街の活性化のための映画を作ろうと思います。

S
面白そうですね。
楽しみにしています。

服部智行監督 ~最新情報~
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『音の城♪音の海』
2010年5月29日(土)より渋谷アップリンクXにて公開

知的障害者の人々と音楽療法家、ミュージシャンたちによって奏でられる
即興音楽誕生の物語を追った感動のドキュメンタリー。
それぞれ背景の異なる面々が演奏会での発表を目標に、
日々失敗を繰り返しながら自分たちの音楽を見いだしていくまでを見届ける。
監督は新鋭のドキュメンタリー作家の服部智行。
障害を持つ子どもたちの個性的でのびやかな演奏の様子や、
彼らと共に独自の音楽を手探りしていく音楽家たちの魂の共鳴が美しく響く。

配給:音の城♪音の海上映委員会 /エイブルアート・ジャパン

オフィシャルサイト
http://otonoshiro.com/

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