Filed under: スペシャル — admin @ 18:24:40

今回は、新鋭のドキュメンタリー映画作家・服部智行監督をお迎えして、
前作の『City Lights』と5月29日(土)に公開される最新作『音の城♪音の海』について、お話しを伺いました。

『City Lights』
視覚障害者が映画を鑑賞する際に大きな役割を果たす“音声ガイド”(場面・人物の動き・情景・字幕など、目から入る情報を言葉で説明すること)。その制作を行う「バリアフリー映画鑑賞推進団体 シティライツ」に集う人々を追った作品。
シロウズ最新作『真夏の夜の夢』の音声ガイド制作もシティライツさんにお世話になりました。
 

『音の城♪音の海』
知的障害者と音楽療法家、音楽家たちが集い“新しい音楽”を作るプロジェクト「音遊びの会」の活動を追った作品です。「音の海」にはシロウズ作品ともかかわりの深い音楽家・大友良英さんも参加されています。


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◇『City Lights』について

S 
前作の『City Lights』はいつ頃撮ったものですか?

H 
映画美学校の一年目の時に作ったもので、2003年ですね。
フィクションコースに通っていたんですが自分はドキュメンタリーに向いているかな、
と思えてきて。

S 
それはどうして?

H
映像で考えるよりも本を読んでロジックで組み立てて考えちゃうこともあって。

S 
なるほど。それ以前にも映画を撮っていたんですか?

H
大学映画サークルで若干手伝ったりしたんですけど、映画美学校に入るまでは本格的にはやってなくて・・・。

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S 
取材対象にバリアフリー映画鑑賞推進団体シティライツを選んだのはどういう理由から?

H
まず、この作品では映像の本質的な部分というか「映像ってなんなんだ?」
ということを探ってみたいなと思ったんです。
その時に「視覚障害者」と「映画」というキーワードが浮かんで、
「シティライツ」という団体にたどり着きました。

S
最初に取材を申し込んだ時の対応はどうでしたか?

H
シティライツの方々は心が広くて、撮られることを気にしない方ばかりだったので、
すんなりOKでした。ちょうど立ち上げて間もない時だったので、
色々な人の葛藤や想いがストレートに表れていましたね。

◇取材を通して知ったこと

S 
この作品の狙いとしては、どのように考えていましたか?

H
全く見えない人の“視点”からスタートすることで
「映像というのは何なのか」を浮き彫りにできるんじゃないかと思いました。

S 
「音声ガイド」の制作過程を見せることでそれが明らかになると?

H
「音声ガイド」で行われている作業は、見える人と見えない人が協力し合い、
映像を翻訳して文字に置き換えて、そのうえで映像を解釈していく・・・
ということの繰り返しなんです。
見えない人には先天盲の人も中途失明の人もいて、なおかつ、
人それぞれで違うイメージを頭に浮かべているんですね。

S 
確かに、我々にしても頭の中にイメージする映像は個々で違いますよね。

H
普通に目が見えている人も自分が意識を向けている部分しか見ていなかったり、
自分のイメージしているものが映像に投影されていたりする。
単純に“客観的な映像”があるのではなくて、かなりの部分で主観的な介在があるんだな
というのが視覚障害者が映画を観賞するという行為を通して見えてきた部分でしたね。

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S
取材前に思い描いていたものと、いざ取材してみて違ったことはありましたか?

H
ある程度、取材前に自分の中で価値観があって、
予定調和的に取材対象者から引き出していたことはありましたね。
ただ、内実というか細かい感情的なことや気持ちは全然想像できていなかったと思います。

S
視覚障害者の感情や気持ちですか?

H
はい。視覚障害者の想いとしては、他人に“障害があるから助けてあげなきゃ”
と思われることは求めていないというか・・・。
映画館もそうですがバリアフリーの整備が進んで、
本当は障害そのものを意識しなくなるような環境ができるのがいいのかなと思いますね。

S
この作品が完成して“自分はドキュメンタリーがいい”という実感は?

H
自主制作映画だし、自分で「撮りたい映画」、「見たい映画」を作ろうと思ってました。
それで、ある程度納得した部分とダメだなと思った部分があって。
その「ダメだな」の部分をドキュメンタリーでまたやりたいなということで、今に至りますね。

S
具体的に「ダメだな」と思うこととは?

H
撮影の技術的な部分が大きいですね。
『City Lights』では、盲目の方が登場しているので、
もう少しイメージ豊かで想像力を働かせるような映像を交えていきたかったんですけど。
初めて撮った映画なので、そんな余裕がなかった感じですね。

S
ええ。

H
その当時は編集も「これでいいな」という感じでやっていたんですけど、
今見ると構成上で問題点があったりして。
でも、それは作品を作り続けているからこそ、見えてきていることでもありますね。
時間を置いて見ると客観的になれますしね。

◇映画館で一般上映

S
劇場公開もされたんですよね?

H
ちょうど映画美学校の映画祭に出品したんです。
そしたら、たまたま当時、佐藤真さんが見てくださって、
映画館で上映しようとなり、ユーロスペースで公開されました。

S
取材対象の視覚障害者の方々は作品を音声ガイドで見たんでしょうか?

H
はい、見ていただきました。音声ガイドは自分で作って、
声優はシティライツの方にやっていただいて、劇場でやる時にそれを流して…。

S
おおー。シロウズの最新作の『真夏の夜の夢』でも音声ガイドを作って、
シティライツさんに協力していただきましたが、本当に大変な作業だと思いました。
でも、今や映画業界でも音声ガイドを作るのは当たり前になりつつありますよね。

H
段々とそうなっていますね。

(後半へ続く・・・)

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プロフィール:服部智行(はっとりともゆき)
1977年北海道生まれ。大学卒業後、映画美学校にてインディペンデント映画製作について学ぶ。2003年、視覚障害者が映画鑑賞するための音声ガイド作りの過程をめぐるドキュメンタリー映画『City Lights』を監督、渋谷ユーロスペースにて上映される。2005年、岩井俊二プロデュースのラジオドラマ『少女毛虫』(主演:南果歩、夏帆)の脚本を執筆。2010年、『音の城♪音の海 ―SOUND to MUSIC―』を監督、渋谷アップリンクXにて上映、ほか全国順次ロードショー予定。

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