Filed under: スペシャル — admin @ 18:27:45

よーい、スタートをかける助監督?
S 
撮影期間は?

K  
5月の16日から16日間ですね。おとん役の雀々さんと、
おかん役の秋野さんのスケジュールが合わなくて。
最初の3日と最後の3日しか二人がそろう日がなかった。
はじめの3日で不動産屋をまとめて撮り、最後の3日で一軒家(隠れ家)の
ドタバタをまとめて撮影しました。しかも中間試験の時期で、
高校生が期間中何日か来られない。
16日間しかないのに、そのうち2日くらいは午前中に撮るものがない!(笑)。
「おーい、すごい晴れてるよ!うー、ほんとに何にも撮るものないのぅ?」と。

S 
監督としての立ち位置としては初だったわけですよね。
イメージしていたようにふるまえましたか?

K 
いや、途中からは助監督も兼ねてたんで。
というのはスケジュールや予算その他でいつも仕事している制作部、
演出部に参加してもらうのは無理でして、ついてくれたのは
大阪の自主映画の人たちが多かったんで、やはり、
プロの現場でやってきてるスタッフのようにはいかないところがいろいろあって。
そんなわけで、最終的なOKを出すというところは今までとは違いましたけど、
それ以外は、助監督との仕事とグラデーションでつながってて。
「よーい、スタート」をかける助監督みたいな。段取りもしてカチンコも打つ(笑)。
やばい雰囲気をかぎつけて、助監督仲間の先輩、武正晴さんが
応援にきてくれたので、助かりました。
武さんと僕と秋野さんで現場を回しているという状態でしたね(笑)。

kazoku_main1.JPG
(c)2006シマフィルム

S 
ロケ場所はとてもよかったです。

K 
あああ、最終的にはなんとかねえ。
でも、密会場所の一軒家も、最初にロケハンで連れていかれたのは、
いまどき見たことないような6棟続きの文化住宅みたいなので、
6畳一間のくらーいアパート。
「え? これは何のつもり?」
「一軒家です」
「いや、一軒家じゃないけど、まあ、まあ、仮に一軒家だとしよう。
で、ここに入って“なかなかいい家やろ?”って愛人に言える? 
君、言える? 言えたら変な人だよね。ここで密会したくないでしょ、
君が浮気するとしたら。なんでここにしたん?」
「家賃が4万円だったんですよ」
「いやいやいや、それはロケセット費とかいろいろあると思うよ、
でもそれ、このロケハンの場で言わんほうがいいと思うよ。
そこは知恵でしょ、知恵」

S 
(小林監督の漫談のようなトークに笑)

K 
結局、映画にもちらっと出ている不動産屋のおっちゃんが協力してくれて、
あの一軒家に。実際は3間続きなんですが、1間つぶして、押入れ作って。
美術部の宇山君が頑張ってくれたので、結果としてはいけたと思うんですけどね。
でも、文化住宅を提案してきた子が不動産屋は見つけてきてくれて。
もう、取り壊すというところだったのを撮影のためにのばしてくれた。
何をしてもいい、あるものも使っていいという好条件。
しかも入ってどんつきの壁が、まるでセットみたいに開くんですよ。
まるで引きジリのためとしか思えない構造で。
お父さんが、不動産屋に入ってきて、思いがけず愛人がいるから
そのままぐるっと引き返すところなんかはその引きジリがあったから撮れたカットです。

S 
映画はときどきそういう奇跡を呼び込みますね。

K 
いや、そうなんですよね。そういう瞬間はありますね。

毎カット、支障だらけ
S 
いろいろ大変だったようですが、監督は切れたりはしなかったんですか? 

K 
最終日には1回切れましたね。
最終日は朝の3時くらいから準備して、愛人のゆかりが賢治に別れ際、
「がんばりや」と言うシーンを明け方にいいかんじで撮って、
6時から10時までは愛人とおとんが密会している居酒屋のシーンをこなして…
すごく順調だったんですよ。
次がグランドのフェンスわきでお父さんビール飲んでるところに
息子が来るというシーン。むこうでは少年たちが草野球してる、という設定でした。
ロケ場所のグランドに先発(ほかのスタッフより先のりすること)して、
僕は近くで弁当かなんか食べてたら、監督補(クレジットでは演出部応援)の武さんが
現場を見て戻ってきて、なんか様子が変なんですよ。
「んー、あのさあ、野球はするの?」
って聞くんですよ。
「え? しますよ、なんでですか?」
って、あわてて見に行ったら、草が伸びすぎちゃって
『風の谷のナウシカ』撮るみたいなことになってるよー、と(笑)。
ロケハンのときも雑草は生えてたんですが
「まあ草野球だし、そんなにきっちり整備されてなくてもええよ」とは
言いましたよ。でも、その後、誰も一度も見に来てないってどういうことだっ!! 
助監督があわてていまさら軍手で抜こうとしてるから、
「いやいや、そこにドンキホーテって店があります。
そこで300円くらいで鎌を売ってるから、すぐ買いに行って。
5本! 金なら出します。頼むから、汁たらしながら、
そんな軍手でぬかんでくれ!」と。

S 
(あまりのトークの面白さにふたたび爆笑)

K 
さらに、助監督がボーボーの草むらの“腐海”に消えて行って。
自殺でもするのかな、と思ったら戻ってきて、なんか小さな声で言うんですよ。
「エキストラがちょっと…」
「え? なに? 言うなら最後まで言おう」
「エキストラがちょっと少なくて…」
「何人いてんの?」
「10人」
「え?」
「10人」
「あああ、まあ、10人ね。まあ、わかりました。
アングル変えて、こうしてああして、なんとかごまかすしかないでしょ」
「内トラいれて10人」
「は? その割合は?」
「…」
「内トラ(スタッフがエキストラを兼ねること)っていっても
ここはみんな車止め(撮影の都合で通行する車に一時的に止まって協力していただくこと)とか
やることあるから無理でしょ。内トラなしで! なしだと何人?」
「ふたり…」
「! ふたり? ふたりじゃ草野球できないよね」
結局、草刈ってるのばからしくなって。
延期。

残りは自転車の走りでの登下校シリーズと病院の表。
谷村美月さんが、その日を逃すともうスケジュールがないから、
そのふたつはどうしても消化しないとダメなんですよ。
片や病院もロケ場所に時間制限がある。
しかもそこに決まったのが2日前なんで、映画用にかけかえる看板が
間に合うかどうかが心配だったんですが、「どうなの?」と聞いたら
「2時にはできます」と。
じゃ、まあ、ぎりぎり間に合うな、と。
「いま、現場に向かってます」って言うから、
ロケ場所でいろいろ別の準備してるんだけど、なかなか届かない。
「看板、どう?」
「向かってます」
「いや、それはさっきの情報でしょ。今、確認して!」
と、促したら、なんか携帯で話してから
「どこまで写りますか?」
って言うんですよ!
それじゃ、これから作るんじゃないかっ!
そこで、切れました。
「向かってる」と誰が言ったんだ!
嘘をつくな、嘘を!と
その時は16日間に耐えたものが爆発しました(笑)。

S 
(笑いごとじゃないが、さらに爆笑)

K 
次の現場に移動する車中で
「こんな日はねえ、2度あることは3度あるんですよ。
きっと。道で撮ろうとしたら工事中とかなんですよ!」と
すねながら言ってたら、なんかハイライダー(作業用のクレーンを備えた車。
撮影現場でも照明のために使用することがある)が見えてきた。
「ハイライダー? 今日、そういう照明にはならないね。
そもそもないよね、この現場には。あ、乗ってる人、ヘルメットかぶってるし」

S 
(笑いごとじゃないが、さらにさらに爆笑)

K 
ほんとに工事中だったんですよね。それで予定していた場所が
没になり、そこからあわててロケハンして。すごい30分でした。

S 
いやー、でも、そうは見えませんよ(笑)。

K 
いっぱいありましたね。いろいろありましたね。
車止めしてるとき、どうしても止まってくれないおっちゃんがいて。
あぶないからって、プロデューサーの中村さんが当たりにいって、
自分からフェンダーを蹴っといて道に倒れ込んだんですよ。
さすがに、そのおっちゃんも「あああ」って車を止めたんですね。
早く、病院に!って騒ぎになって、僕も頭まっしろですよ。
ああ、ついに怪我人を出してしまった。
やっぱり、こういう無茶を現場で重ねてはいけない。
もう、このカットはあきらめよう、ってすごくブルーになって
中村さんを乗せた車を見送ってたら、その車が1周して帰ってくるんですよ。
中村さん、元気に降りてきて「あ、芝居、芝居」って。
「どこで、そんな芝居覚えたんだぁっ!!」

S 
面白すぎますねえ(笑)。

K 
ええ。DVDにはそんなこんなのメイキングが1時間、ついてます。

助けてくれた役者さんたち

S 
ロケ場所について奇跡を呼びこんだ話をうかがいましたが、
お芝居に関してはそういう瞬間はありましたか?

K 
秋野さんのいろんなことは面白かったですね。
後半、夫の浮気をみんなが知っていた、とわかった瞬間に過呼吸になるところとか。
あれは、思いつかないですよね。こちらから何も言ってないから。
なんか倍音みたいな音が出てるんですよね。あれはすごいなーと思いました。

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(c)2006シマフィルム

S 
雀雀さんと秋野さんのかけあいは楽しかったですね。

K 
お二人で息があって楽しくなってきて、こんなん面白い、
こんなん面白いと足してくれる。それはありがたい反面、
完全に安心しちゃうと舞台劇っぽいことになりがちなんです。
初日から、お昼休みをはさむととにかく増えてる(笑)。
採用したものもたくさんあるんですけど、「いや、それはナシで」と引き算もして。
「嫌いなん?」「いや、嫌いじゃないんですけど、編集で切ることになるんですよ」
「そおお? そおお? 面白いのになあ」なんて嫌がられながら。

S 
テントさんとはどうでしたか?

K 
あ、テントさんはキタキツネとか猫を撮るのといっしょなんで。
猫が猫らしい仕草をできるような快適な状態にする、以上、ですね。
何にもしてません。

S 
谷村美月さんは?

K 
すごく、いいですね。舞台挨拶かなにかで「監督はどうでした?」と聞かれて、
「走り回ってて助監督さんみたいでした」と笑顔で答えてましたね。笑顔の毒舌(笑)。
いろんなことをしっかり見てるんですよ。
 彼女のシーンで編集で落としたところもあるんですが、
切っても彼女の印象は弱まらない。それはすごいな、と。
どんなシーンか? あ、それはDVD特典に入ってます!(笑)。

S 
愛人役が、いかにも愛人然としていない、ちすんさんだったことは
作品の色合いを作っていました。

K  
不倫関係がこのままもつれて包丁が出てくることが予感される人だとちがうな、と。
ドロドロのところに踏み入れない、ある明るさのある人がいいな、と思ってました。
もともと舞台の人なので、舞台芝居を崩していくことをリハでやりました。
ドタバタの最終日に撮影した、賢治との別れのシーン。
「がんばりや」のところのゆかりと賢治は好きなんです。あのときの彼女の顔はいいです。
ゆかりと賢治の間には疑似恋愛というか、もっとつながるシーンがなくては
駄目だと思っていたんだけど、彼女の笑顔の寄りで「まあ、いいか」と思えたんで、
僕自身が救われました。
彼女、背、高いんです。170くらいある。
女性ふたりが背が高かったなあ。秋野さんも170くらい。

S 
秋野さんの衣裳あわせは商店街だったとか?

K 
いちおう、衣裳あわせの場所に何着かは用意されてましたが、
20分くらいしたら、秋野さんが「ここにはないと思うわ、行きましょ」って、
外に出てしまって。スタッフ、あわてて後を追う、みたいな。
十三の商店街のおばちゃんショップをずーっと回って。
「これどう? 4000円? 高いな?高いな?」って
予算まで気にしてもらいました。
で、帰りに「わたしな、こういう衣装合わせはじめて」って。
「僕もはじめてです。すみません」(笑)。
いや、ほんと、秋野さんじゃなかったら成り立たなかった。
秋野さんと初めて顔合わせした日、タクシーのところに見送りにいったんです。
その別れ際に聞いたんですが、何年か前にぴあ出身の新人監督の作品に
出はったことがあって、メインスタッフはベテランだったんですって。
監督が、こっちからこう撮りたいといっても、そんなの成りたたないよ、
というモードになってたんだと。それがすごく嫌だった、ベテランこそ
いろんな引き出しをもってるんだから、助けてあげるべきじゃないか。
「だから、私、頑張るから、なんでも言って」と別れていきはった。
おお、かっこよすぎるなー、と。いいセリフでしたねえ。

つまるところ男の子の話に

S 
撮影した素材を見たときはいかがでしたか?

K 
落ち込みますよね。うーん。脚本の問題もあるし、カットが足りないというか、
丁寧に撮ってるのとは違う、あるいは美術的、演出的なことで心残りがあるとか。

S 
編集しながらお客さんの顔は浮かんでましたか?

K 
自分しかいなかったですね。具体的なターゲットとかは浮かんでないですね。
編集の宮島さんからサジェスチョンしてもらって変わったところはけっこうありますね。
撮影のときからテンポで見せきる、というのは考えていたので、
妙な間はなるべく詰めていきたいな、と。そういう作業でした。
あとは、ちゃんと「賢治の話」に見えるようにしたいな、と。
話が飛びますが、秋野さんと顔合わせしたときに
「小林さん、この映画は、つまるところ何? なんの話?」と
ズバッと切り込んでこられたんですよ。
うーん、これはどういう答えを聞きたいんだろう、とパニックになりましたね。
それを見て「家族の話なの、男の子の話なの?」と助け舟出してくれて。
え? 自分は主役じゃないってことを確認したいのかな、いや、どうなんだろう、
でも、自分が思ってることを言うべきだろう。
で、「『かぞくのひけつ』というタイトルはついてますが、まあ、男の子の話です」と
答えたんです。うじゃうじゃした家族をもっている男の子が、
親たちのようにはなりたくないが、女の子とはつきあいたくて悩む話、と
補足したかもしれません。
脚本づくりのときもそうでしたし、編集のときもそれは気にしてました。

S 
『かぞくのひけつ』というタイトルは?

K 
ずっと仮題のままでしたが、最終的にも残りました。
ひらがなになったのは、なんか書いてみたらよかったから。
時間がないのにシナリオの表紙のデザインしましたね。

S 
タイトルバックの文字も監督が作られたんですか?

K 
手彫り、コマ撮りですね。家で1日かけて撮りましたね。
じぶんちで。『ウォレスとグルミット』は大変だなーと言いながら。
ほんとはローリングもそうしたかったけど、時間がなくて。

S 
なんとか公開には間に合ったんですね?

K 
結局、夏のイベントで上映するというのはなくなって、
その年、2006年の12月2日に公開しました。
あ、ちょうど2年前ですね!
東京は、去年の12月にユーロスペースでやりました。

S 
公開のときはお客さんの反応を観ましたか?

K 
十三での上映はなんどか立ち会いました。
盛り上がってるんだけど、地元だから、
「ああ、あれ誰さんの家や!」
「なんとかさんや、なんとかさんや」と。
そういう意味で、ほんとの意味で反応がいいと言えるのかどうかは
わかりませんが。でも上映中に笑い声や話声がするのは嫌いじゃないんで、
「いいなあ」と思ってました。

S 
私もユーロスペースで拝見したんですが、お客さんたちが
すごく笑ってました。今回、家でビデオでも見直しましたが、
やはり劇場で観るのに向いているな、観るべき映画だなと思いました。
共有感があるというか。

K 
それはうれしいです。

個人と集団、そして映画

S 
今後のご予定は?

K 
いや、もう目の前にあるやつをやるだけですね。
小器用で終わっちゃいけないな。冒険しないとな。

S 
また、大阪を舞台に?

どうでしょう。大阪だけになるのはいやなんですけど。
『てれすこ』みたいなのを、ちゃんと上方落語でやる、
というのはいつかはやりたいですねえ。ちょんまげ時代なのか、
明治あたりの話かはわかりませんが。

ここで佐々木社長登場。
小林監督は、ドキュメンタリーの仕事を終えたあと、劇映画を目指す。
人を介してオフィス・シロウズを知り、しばらく出入りをしているうちに
『ナビィの恋』で劇映画の助監督デビュー。その後『ホテルハイビスカス』にも
参加していただいた。ゆえに社長とは旧知の仲。

佐々木 
聖太郎はさ、どういう監督にあこがれるの?

K 
川島雄三さん、今村昌平さん。特に『にっぽん昆虫記』までの今村さんが好きです。
うーん、よくできたものが好きですね。ヌーベル・バーグ以降というよりは。

佐々木  
家族の問題には、いつもひっかかってないか?

K 
そうですね。あとは日本というか、個人と集団ってことですかね。
ひっかかっているのは。集団に対する違和感がずっとあって…
ま、みんなあるんでしょうが。

佐々木 
そういうことが苦手だったの?

K 
幼稚園が中央なにわ幼稚園というところだったんですよ。
卒園式で園長さんが「中央なにわ幼稚園の、中央はかしこいということですから、
みなさん、誇りをもっていきましょう」と挨拶して、なんかおかしいな、と。
中央ってかしこいという意味? 違うし。集団に属していることで誇りを持つ、
という考え方に違和感をもったんですね。なんか嫌だ、と。
そういうところに誇りは持てない。人間として、個人として誇りを持ったとしても。
そういうことはやっていきたいですね。それが、たまたま家族だったり、
日本だったり。そこに対する違和感を表明していきたい。

佐々木 
じゃ、映画は向いてるね。映画は集団でやるけど、
それぞれが違う思いを持ってるから。

K 
そこが好きですね。自立しながら共闘している、というね。
“連帯”とも違う。しかも、それぞれがそれぞれの理屈でやっていながら、
うまくひとつになったときにはうまくいくし、だめなときはパーッと崩壊するし。
うまくいったときの不思議なさみしさと、盛り上がりと、熱気と、それが楽しいですね。

佐々木 
1回1回解散するしね。じゃ、さいならね、というのがいいじゃない。

K 
僕、実景撮りの日って好きなんですよ。地方ロケで天気がよかったりしてね。
芝居はアップした、かるい打ち上げもした、その次の日くらいに
最少人数で浜辺の実景なんか撮りに行く。
「いいですねえ、ま、もうひとつ撮っておきますか?」っていう、
あの時間がすごく好きなんです。
やりきって、ちょっとホッとして、いいもんができるんじゃないかという
期待感のなかでの、ね。
はじめて原一男さんの助監督として浦山桐郎さんのドキュメンタリーを
撮っているときに、長谷川和彦さんにインタビューしたんですけど、
浦山さんは、カメラ移動もない5秒の物撮りカットを「よーい、ハイッ」と、
本当に大きな声をかけて撮るんですって。なんでですか、と聞いたら、
こうあれかし、と思って監督が声をかけて撮れば、それは絶対に違うのだ、と。
その教えは今でも残ってる、とゴジさんが言うんです。
おっさん30人くらいが花瓶に群がってね。みんなでガーッとそこに向かってる。
確かにそうすることでなにかが違ってくるんじゃないか、と思うんです。
物理的に違うかどうかはわからないけど。そこにいる人の空気は確実に違うと思います。
『かぞくのひけつ』でのラストカットは、
賢治が「がんばりや」と言われたあとの押入れの扉だったんですが、
浦山監督のエピソードを思い出して撮りました。中に誰もいないんですけどね。

(2008年12月2日 オフィス・シロウズにて インタビュー:坂巻  文責:松田)

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