Filed under: スペシャル — admin @ 11:00:01

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◇『ラッシュライフ』の公開を経て…

S
『ラッシュライフ』が公開されて注目されましたが、
あれは製作領域がお金集めからやるんですか?

N
そうですね。あれは企画自体が製作領域主導で、
まず製作の学生がそれぞれ映画化したい原作をプレゼンして、
その中から学生みんなが投票して先生も意見して1つ選ばれるんですね。
それが決まった段階でお金集めから原作者への交渉とか著作権のクリア、
キャスティングや劇場配給まで製作領域の学生が請け負います。
基本的な実務作業は全部学生がやってますね。

S
製作費ってどのくらい集めたんですか?

N
『ラッシュライフ』の時は藝大+4社で1,200万くらいでしたね。
宣伝費も入れると約1,500万です。

S
役者さんも豪華ですし、バルト9でも公開されましたよね?

N
シネコンで普通にかかったっていうのは一歩踏み出した感じはありますね。
今まではレイトショー公開などだったので。

S
そこまでできたのはなぜなんでしょうか?

N
ひとつは、プロデューサーの能力だと思います。
某大手広告代理店を休職してこの大学の製作領域に入った人が企画したので。

S
その辺のプロデューサーよりよっぽど顔が利く人がいたんですね(笑)。

N
だからちょっと特殊なケースだと思うんですけど、
ここまできちんとした形でできたのは彼にとっても藝大にとってもひとつの実績になりますし、
後輩たちを含めた学生みんなにとっても良かったのだと思います。

S
藝大の中では一つの理想のケースとして今後は皆がこれを目指していくんでしょうか?

N
いえ、学生にもそれぞれの志向がありますから。
例えばアート志向の人にとってはここまで商業的になってこれが本当によかったのか?
という思いはあるようですし、学生の中でもいろいろ意見が出ているんです(笑)。

S
なるほど(笑)。

N
やっぱり監督の人は自分のやりたい事や表現に対しての思い入れが強い人が多いので、
アート志向というか作家主義的な面があると思うんですよね。
それが実際、彼らがデビューした時にどこまでできるのかというのはありますけどね。

S
そうですね。

N
だからプロデューサーの在り方も大事で、製作領域の堀越教授としても
「プロデューサーとしてのビジネス的側面の能力はもちろんありつつも、
作家のクリエイティビティをちゃんと理解してきちんと守って、
しかも国際的なマーケットの中で作らせてあげられるプロデューサーを育てていきたい」
との思いはあるのではないでしょうか。
そのために、毎年KAFA(韓国映画アカデミー)と合同で合宿形式の
ワークショップなども行っています。

 「国立大学の映画学科」であるということ

S
映画の学校はいろいろありますが、藝大の特色というのはどのようにお考えですか?

N
歴史的には他の学校には及びませんが、やはり「国立大学の映画専攻」は
日本国内ではうちしかないので、それが特色なのかと。
韓国でもフランスでも国立の映画学校が古くからあるわけですよね。
国の中、その文化の中での映画の位置づけというものは、
その国に国立の映画学校があるかないか、ということにもあらわれますよね。

S
確かに・・・。

N
授業の中身や教育内容とはちょっと離れて、
まず「国立の大学で映画づくりを教えている」ということが、
国内における映画の文化的な位置づけに影響すると思います。
それから日本の場合は映画教育のメソッドがあまり確立されてなくて、
かつてはスタジオが教育の部分を受け継いでいた伝統があったと思うんですけど、
それが崩壊した今、学校がスタジオでの人材育成とは違った形でできることを
確立していきたいですね。

S
他国の国立の映画学校との関わりは?

N
一番関係が深いのが、今のところKAFAですね。
2007年に短編を共同制作し、日韓で上映しました。
日本では、国際フォーラムでの上映です。映画祭にもいくつか出品され、
SKIPシティの国際Dシネマ映画祭で奨励賞/川口市民賞を受賞しました。
こちらからは2期生がメインのスタッフとして参加したのですが、
日本のスタッフ・メインキャストが韓国に行って撮影をして、
韓国側のスタッフ・メインキャストが横浜に来て撮影して、一緒に2本作りました。

S
特に問題もなく?

N
まずはお互い母国語じゃない英語でコミュニケートするのが難しくて、
その中で映画の作り方も考え方もちょっとずつ違ったりして、
いかに意思疎通してすり合わせていくかという大変な作業だったと思うんですが、
一つのものを一緒に作ると絆が深まるみたいで、この後もずっと連絡を取り合っていて
仲良くやっているようです。

S
では、KAFAとはその後も続けて?

N
そうですね。
その後、製作領域なんですが、先ほどちょっと触れたワークショップを
毎年夏に合同でやっています。1年毎に韓国と日本と交互に行き来して、
そこで企画のコンペをやって優秀なものがあったら映画化を考えるという。
今、一つ長編の製作に入っていて3月に撮影予定なんですが、
両方の国で劇場公開をしたいと考えています。

S
なぜ韓国の学校と一緒にこのような活動をしようと?

N
一つには、感性や文化も含めて色々なことで近いので、
特に最初にやるにはお互い一番いい相手かと。
あと、根本的な問題として、国際的な市場を考えた時に、
絶対今後は共同制作ということを視野に入れていかなければいけないので、
アジアの映画の中で日本と韓国は一緒にやっていくべきだろうと考えています。

S
なるほど。

N
今後はフランスの国立映画学校であるフェミス(FEMIS)やルイ・リュミエールとも
協働していこうと話を進めています。
こうした形でネットワークを広げていきたいですね。

S
国際的なネットワークが培われますね。

N
学生にとって貴重な経験になりますし、人脈を作るということ以外に
「国際理解」という意味でも大切なことだろうと思います。

S
そのような活動ができるのも藝大が「国立の大学」という信頼度があるからこそですね?

N
そうですね。
例えばKAFAはKOFICという韓国政府の中の映画を扱う部門の直属組織ですし、
立場的には国立同士だからお互いやりやすいというのはあるのかもしれません。

S
今後はどのような新しい取り組みをお考えでしょうか。

N
毎年領域を変えて技術系のワークショップと国際シンポジウムを
どなたか海外から講師を招いてやっていきたいと考えています。
あとはワークショップなり共同制作なりを通して、
国際的なネットワークを徐々に広げていけたらというのもありますね。

S
日本だけに留まっていない感じがしますね。
今後の活動が楽しみです。

(2010年1月 藝大大学院馬車道校舎にて
インタビュー:坂巻、松田 文責:坂巻)

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卒業生の声 : 加藤直輝監督(映画専攻1期生)

変な2年間でした。
なにしろ映画のことしか考えない。
一年中ずーっとえーが、えーが、えーが。
見て、考えて、書いて、撮って、みんなで見て、
あーだこーだ言われて、また撮って・・・
毎日です。ちょっと頭おかしくなりますね。
きっと、ちょっとおかしかったと思います。

座学もありますが、実践あるのみ。
スパルタです。基本、放置されます。
2年で計4回の撮影実習がありました。
監督が6人いたので、実習毎に6組の現場が組まれます。
短編、長編、16mmやデジタルなど様々な現場でした。
私たちは第一期生、勝手がわからず闇雲でした。
2年間で30本近くの作品ができました。

 映画って人柄が剥き出しになりますね。
特に現場は丸裸になります。
学生は経験も余裕もありません。
ぐちゃぐちゃでした。
なんだろう、
怒ったり、泣いたり、びびったり、笑ったり、放心したり、
川に流されたり、寝ながら運転したり・・・よく壊れる人が出ましたが、
死人は出ませんでした。
ごく稀に喜びが訪れます。

つらい経験を共有すると自然に恋が発生したり、欲情したりします。
そんな風紀の乱れを取り締まる秘密警察が結成されたりもしました。
卒業式、事務方の人が祝辞で「動物園だった」と言ってました。
この2年間をドキュメンタリーで追っていたら、
見事な人間模様が撮れたのではないかと思われます。

そんな同級生たちはそれぞれの関わり方で映画を続けているみたいです。
私も、『アブラクサスの祭』という作品を作っている最中です。

シロウズ新作『アブラクサスの祭』公式HP!ウツの坊主がライヴ!?http://www.aburakusasu.com/

Filed under: スペシャル — admin @ 15:36:27

現在、日本では映画の現場にいるスタッフの多くが
映画人を育成する学校機関と関わりがある。
自らが卒業生だということもあれば、学生を教える立場でいることもある。
いずれにせよ「映画の現場」と「映画の学校」は切っても切れない関係・・・。

シロウズスペシャルではそんな「映画の学校」にフォーカスして、
各学校がどのような映画人の育成を目指しているのかシリーズでお届けします。
 

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第1弾は東京藝術大学大学院映像研究科:映画専攻。
今年でようやく6期生が入学となるにもかかわらず、
すでに卒業生の活躍が目覚ましい日本国内初の国立大学の映画専攻です。
今年公開となる『アブラクサスの祭』(シロウズ製作)で商業映画デビューとなる加藤直輝監督の母校でもあります。

今回は映画教育運営室の名越さんに藝大大学院馬車道校舎でお話をうかがいました。
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映画専攻の校舎は横浜馬車道にある昭和初期に建てられた銀行だった建物を利用しています。傑作を生み出すに相応しい、非常に風格と趣のある建物です。

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1階のオープンスペースは吹き抜けで心地よい空間になっています。

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銀行の名残である金庫はそのまま機材室として使用・・・扉が厚い!
レオス・カラックス監督の『TOKYO!』でのロケに使用され、「開校当初から扉は常に開けられていたのですが、レオスが撮影時にこの扉を閉めたいと言い出したので、スタッフは大慌てでした(笑)」(名越さん)

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立派な試写室が大・小完備されています。

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シロウズ(以下S) 
まず、映像研究科の専攻形態を教えてください。

名越(以下N)
修士課程は、映画とメディア映像とアニメーションの3専攻になります。
最初、大学院映像研究科が2005年にできた時はまだ映画専攻だけでしたが、
その後1年遅れてメディア映像専攻が始まって、
アニメーション専攻が2008年に設置されて今年の4月で3年目ですね。

S
今後も専攻が増えていくことはありますか?

N
芸大としては「映像はこの3つを柱にやっていく」という計画で研究科を開設し、
ようやくその3専攻が揃ったというところです。これ以上増やす予定はありません。

S
博士課程もあるんですね?

N
3専攻共通の形で、映像メディア学専攻という博士課程がひとつあります。

S
学生の数は?

N
約150名ですね。映像研究科全体で。

S
そんなにいるんですか。

N
けっこういるんです。(笑)
ただ、ここの校舎(馬車道校舎)は基本的に映画専攻の学生が使用しています。
その他に港の方にメディア映像の建物があって、そちらに大きなスタジオもあります。
 
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(こちらがそのスタジオ↑ ここでもレオス・カラックスが撮影したそう)

それとはまた別にアニメーション専攻がワンフロア借りているビルがあって。
あと博士課程が別にまたワンフロア借りていて。全部建物が別なんです。

S
ちなみに入学式はどこで?

N
入学・卒業は全部東京藝術大学の上野校地なんです(笑)。
学生は面倒だと思うんですけど。

S
確かに(笑)。入試はここで?

N
入試はここでやります。
機材などを使用することもあるので、ここでないとできません。

S
映画専攻の入試の内容というのは?

N
1次試験は全領域(コース)とも作品やポートフォリオの提出ですね。
2次試験は領域によってそれぞれ違うんですけど、
課題提出の他に筆記試験や実技や面接などがあります。
監督領域や脚本領域は3次試験までありますね。

S
作品提出となると、それまでに映画や映像作品を撮ったことのない人は難しいですね?

N
そうですね、提出課題の中にだいたい作品が含まれているので。
ただ、領域によっては、企画書や構想のポートフォリオ等で作品に代えられますし、
脚本領域の場合などは、逆に未発表作品の提出に限られています。

S
年齢的には20代前半ばかりですか?

N
30代や、中には40代の学生もいますよ。特に年齢の上限があるわけではないので。
それこそ開校当初はこの学校が出来るまで待っていたような人たちが入学して
年齢がけっこう高めだったんですけど、最近はその層が減って
必然的に若くなって大学出たての人も多いですね。

S
倍率は?

N
2009年度は、3専攻合わせた映像研究科全体では3.1倍で、
映画専攻だけに関して言うと3.4倍でした。
その中でも領域によってけっこうバラバラで、監督と脚本がやっぱり多いですね。
技術系(撮影照明/美術/録音/編集)はこの2領域に比べると少ないですね。

S
なるほど。

N
ただ『ラッシュライフ』(在学生が企画・製作)が公開されて藝大がメディアに出たり、
卒業生が監督デビューしたこともあってか、今年、応募人数が増えた領域もあります。

S
海外からの留学生も?

N
受け入れはもちろんOKですが、日本語がある程度堪能であるのが絶対条件ですね。
授業は海外ゲストのレクチャー等を除き全て日本語ですし、制作実習の中でも
学生同士で議論したりするのに、日本語のコミュニケート能力は必須になりますから。
今のところ映画専攻は韓国からの留学生が2人ですね。
短期の交換留学といった制度はないので、2人とも2年間の修士課程を
ここで修める予定です。

◇国際的に通用する人材育成

S
入学時点でのスキルレベルが高いと思うのですが、
人材を育成する姿勢としてはどのような方針なのでしょうか?

N
大学側としては、ある程度基本的なスキルがある人が国際的に通用するくらいの
クリエイティビティと専門知識と技術力を身につけるためにこの場を活用して欲しいと思っています。

S
なるほど。

N
あとはここで培われた人との繋がりがこの先仕事をしていく上で大きくなっていくので、
講師の方々とともにそのあたりも含めて学生を育てていければという感じですね。

S
そういう意味では恵まれている講師陣ですよね?

N
そうですね。現役で現場に出ている方からお話を聞き、手取り足取り指導してもらって、
場合によっては現場にも参加できるというのは、この学校の強みですね。

S
確かに魅力の一つですよね。

N
その他に、特別講義では毎年違う顔ぶれで外部から
現場の最前線で活躍している方をお招きして、講義をしていただいています。
海外からのゲストも、だいたい東京フィルメックスの時期が多いのですが、
ちょうど来日されている方に来てもらうことが多いですね。

S
卒業生の進路は?

N
技術系は専門の会社に就職するかフリーで現場に助手として入っていきますね。
脚本や監督は就職を目指しているわけではないので、脚本であれば書き続けるとか、
監督の人であれば次の作品を準備しながらチャンスを窺うという感じだと思うんですけど。
製作には、TV局や広告代理店などに就職する人もいます。

S
すでに何人か監督デビューされてますね。

N
お陰さまで監督領域からは商業映画デビューの監督が出てきてます。
1期生は『東南角部屋二階の女』の池田千尋監督で2期生が『携帯彼氏』の船曳真珠監督、
イエローキッド』の真利子哲也監督(3期生)と続いて、加藤君(1期生)が
アブラクサスの祭』でデビューということになりますね。

S
ええ、シロウズの最新作です。

N
あとは、修了制作が映画祭に出て評価されています。
加藤君の修了制作『A Bao A Qu』も釜山国際映画祭のコンペティション部門に
正式出品されたり、2期生では『PASSION』(濱口竜介監督)が
サンセバスチャン国際映画祭の新人監督コンペティションと
東京フィルメックスのコンペティションに正式出品されました。
3期の『イエローキッド』は、バンクーバーに出品されて1月30日からは国内で劇場公開、
それからロッテルダム、香港、全州と映画祭をまわります。
修了制作が全国の劇場で一般公開されるのは、これが初めてです。

S
それまでの修了制作の国内での上映形態としては?

N
毎年3月にここの試写室で1回と、あと都内の劇場(今のところ毎回ユーロスペース)を借りて
有料上映する形での修了制作展を必ずやっていますね。

S
そこで認められて各映画祭に出品するんですか?

N
まず、修了制作は、必ず学校としてカンヌの批評家週間にだけは応募しています。

S
いきなりカンヌ・・・

N
今のところ結果は出せてないのですが、志としてそのくらいのレベルを狙えという、
大学としての学生に対する意思表示です。
あとは今度の修了生で4期になるので、4年目ともなると過去の積み重ねで、
映画祭の方から「今年どう?」と声を掛けていただいたりする場合もあります。
海外の映画祭はコーディネーターさんからお話をいただいて、
来日中のディレクターさんに見ていただいたりもしてますね。
それ以外はもう、製作担当と監督がどれだけ映画祭に出したがるかによるんですけど。
出品するかしないかは、基本的には学生に任せています。

S
エントリーの費用や発送なんかも学生たちで?

N
学校経由で映画祭から依頼があった場合は、全部学校側が出しています。
学生が自発的に応募する場合は、正式な出品が決まってからは
こちらが全部請け負いますけど、応募の段階でDVDを送ったり
オンラインでフォームを送るなどの手続きは全て学生に任せています。
その際、学生の場合はあまりないですが、エントリーフィーがある時は
学生が自分たちで出しています。

S
そうなんですか。

後半へ続く・・・>

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