2008/12/15 月曜日

モニカ

Filed under: 本日のつぶやき — admin @ 16:28:11

先日、京都からの新幹線でのできごとですが、
席に落ちついて駅で買いこんだ「祇園の二段弁当」を、
さあ食べようとして、ふと見ると
通路の反対側に知った顔を見つけました。

脚本家の丸山昇一です。

や、珍しいところで会うね、
京都だということは東映の仕事かい?
と声をかけようとしたら、
向こうも私を見て曖昧な感じで会釈したのですが、
そのままシートに座り込んで
本を読みはじめたのです。
さては女連れか、と私は察しました。
ここは知らん顔するのが友達というもの、
私もそ知らぬふりで弁当を広げたのですが、
「のぞみ」が大津を過ぎ、米原を通過しても
彼の隣りの席には誰も座りません。
私も気になるものですから、ちらちらと盗み見していたのですが、
彼もいっこうに話しかけてくる気配がありません。

ヘンなやつだ、と少し気を悪くしたのですが、
そこでハッと気がつきました。
彼は丸山昇一ではない。
そっくりだけど、あの人は、作家の浅田次郎氏だ。
そういえば横顔のあたりが少しだけ違う。
それに丸山よりちょっと大柄だ。
ああ、話しかけなくてよかった。

その丸山とは「すかんぴんウオーク」という映画で
はじめて仕事をしました。
はじまりは渡辺プロの渡辺晋社長から、吉川晃司という新人を
映画からデビュウさせたいと相談をされたことで、
さっそく中野の福屋旅館に監督の大森一樹、脚本の丸山昇一を閉じ込めて
シナリオ作りにとりかかりました。
誰かに決めて、任せてしまえば何とかなるだろと思う私の悪い癖は、
今も20数年前も同じなのですね。

なにせ吉川くんの特技が国体レベルの水球だということで、
最初のシーンはすんなり出来ました。
ヘリからのカメラが東京湾を移動していくと、
港へ向って泳ぐ青年の姿が見えてきます。
広島から、いま東京へ着いたところです。
なぜ泳いできたのか、広島からは無理だろ
などのリアリティはこの際、無視です。

ええぞ、ええぞと丸山昇一。
これが映画や、と大森一樹。
四角い卵に女郎の誠になりゃしないかい、と私は懸念したのですが、
調子づいた2人はもうとまりません。
何ですか、その四角い卵って。
だからさ、有り得ないことのたとえよ、と私は答えましたが、
異様にハイな雰囲気で滑り出したものですから、
いや、もう最初が決まれば大丈夫、
24時間以内にはアカデミー賞もののシナリオ完成ですよと保証されて、
明日には電話くれよと、疑わしい感じもありながら旅館を出ました。
座布団あたためて、お待ちしてますと丸山。

2日間、待ちましたが連絡がなく、
私も焦り気味に旅館に足を運びましたら、
はたして、まったく進んでいず、シナリオライターになる以前の
丸山の貧乏ばなしで盛り上がるばかりで、
見るとタイトル案だけが書き散らしてあるのです。

それも「泳いできた真珠」で、真珠とは何のことだ、
意味不明でどうもパッとしません。
タイトルは実は最後まで決まらず、
私は自腹で賞金をだして、いろんな人に呼びかけ、
あるCMプランナーが書いてきた『すかんぴんウォーク』にやっと落ち着いたのですが。

『レニー・ブルース』(’74)のような悪口スタンドアップコメディを使おうとか、
『女優志願』(‘58)で初日の幕が上がっていく瞬間があるのですが、
吉川くんが「モニカ」を歌うラストをそんなふうにしたいとか、
やたら多くのアイディアから搾り出したシナリオも、やっと進みはじめたので、
こっちも忙しいんだ、帰るぞと云って部屋のふすまを閉めたら
「社長、ラーメン頼んでくれない」と丸山の大声が聞こえ、ムッとした私は
「自分でやれ!」と怒鳴って階段を下りていきました。

彼とはその後も、いくつかの仕事で一緒しましたが、
昨年でしたか久しぶりに、あるパーティで出合って、私がタバコをくわえたら
サッとライターをさしだして、あなたのおそばに100円ライター、
と20年以上も使い古したギャグを飛ばしてきたのは相変わらずでした。

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