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2005/04/30更新

『カナリア』トークショー第三弾

at 渋谷アミューズCQN  4月10日(日)

谷村美月 vs 塩田監督

髪が長いままでは成り立たないと思いました

塩田:一番最初に谷村さんに会ったのは、いつぐらいだっけ?一年前の今ぐらいなのかな?

谷村:はい。

塩田:まだ、当時13歳、だよね。随分大人になられまして(笑)。

谷村:(笑)全然。

塩田:谷村さんは最初に会った時は、ロングヘアでしたね。肩の下まである。正直、全然印象違うよね。

谷村:髪の毛を切って学校に行ったら、すごくみんなびっくりして。何でだろう?って謎だったみたいです。映画のことは何も喋らなかったんで。

塩田:あーなるほど、彼氏にふられたの?とか(笑)。

谷村:いや、そんな。でも、そう思ってる子もいたかもしれないですね。

塩田:最初のオーディションで見た時の素の谷村さんはのんびりおっとりした印象だった。テキパキするわけでも、つっけんどんなわけでもなく、怒鳴りそうなわけでもなく...。ただ、あとで写真に写った顔を見た時に、この子、梶芽衣子にそっくり、と思ったんだよね。(笑)知らないか。

谷村:はい。

塩田:『修羅雪姫』とか。

谷村:あ。

塩田:「あ」ってなんだ(笑)。ま、梶芽衣子さんという有名な、ものすごく尊敬してる女優さんがいるんだけども、その人にそっくりだなぁと、別にそれで選んだわけじゃないんだけど。で、そういう顔しているにも関わらずおっとりした性格の人だったんで、由希役に合うのか合わないのかよく分からなかったんだよね。

谷村:そうですね、私も髪の毛が長いままではこの映画は成り立たないのかなっていうのがあったんですよね。

塩田:あ、ほんと? 何回かオーディションしたじゃない? その過程で、これは私ができそう、やれるっていう気がだんだん高まってきたの? やっぱり。

谷村:いや、全然。あのー、何回も監督にお会いする度に、だんだん自信がなくなってきて......。

塩田:そうなの?

谷村:たくさん女の子がいたんで、今日も、今回も駄目かぁ、みたいな感じだったんですけど。

塩田:あ、そうなんですか。僕の場合、ほとんどオーディションって雑談ばっかりしてるじゃないですか。

谷村:はい。

塩田:この人どういう人なんだろうってことを知りたいから雑談しかしないんだけど、最終のオーディションでは、実際にあるシーンを演じてもらったんだよね。ああやって、芝居してもらうようなオーディションは滅多にやらないんです。

谷村:あ、そうなんですか。

塩田:『害虫』で宮崎あおいさんを選んだときも話しただけで。ただ今回はね、由希っていう人がよく分からないと思って。それで光一役の石田法嗣くんと一緒に演じて貰ったんだよね。そうしたら二人の相性の悪さがすごく良かったんだよね。

谷村:あー、そうなんですか。最終のオーディションでは緊張して自分の台詞が完璧に言えなかったから、法嗣くん、やりにくいだろうなぁとか思って。動きもできてなかったっし、今回も駄目だなぁって?。

塩田:狭い部屋で動いてもらったというのもあるんでね。だんだん遠ざかっていく芝居なのに一周して近づいちゃったり(笑)。そりゃ、やりにくいかなって。でもね芝居がすごく良かったので、谷村さんにやっていただくことにしたんですけども、長い髪のままだとやっぱり違うんじゃないかと思って、切ってもらえませんかって頼んだんだけど。抵抗は無かったの?

谷村:いや、逆にすごく嬉しかったというか、これを機になんかバッサリ切れるのは良かったな、と。

塩田:準備途中で、谷村さんに髪を切ってもらったんだけれども、人間これだけ変わるんだっていう衝撃があった。その瞬間からこう谷村さんの言動もだんだん変わっていきましたよね。

谷村:はい(笑)。

毎日、お母さんに電話してました

塩田:撮影中、自分が演じていて、これは演じ切ったぞっていうシーンとかあった? 自分の全力今出せた、みたいな。

谷村:最後のシーンですかね、おじいちゃんとやりとりするところは、遅い時間に撮影してたじゃないですか?

塩田:色々あってね(笑)。遅い撮影になっちゃったんだよね、あの日だけね。

谷村:眠さでも自分と闘って。やっぱり『カナリア』最後の撮影っていうのがあったから、自分の中で精一杯の力を出し切ったっていう感じでした。

塩田:"クランクアップです、お疲れ様ー、えー、じゃあ石田法嗣くん谷村美月ちゃんから一言ずつ"ってことになって。感極まって泣いてましたね、美月ちゃん。

谷村:あー(笑)

塩田:頑張ったっていう充実感なのかな、クランクアップの時に泣く人は時々いるんだけど。あの、初めてもらい泣きしましたね、密かに。

谷村:えっ、ほんとですか?

塩田:うんうん。それはやっぱりその、13歳の女の子がこう撮影中一ヶ月間ね、親元離れて一人で東京に暮してたんだよね? アシスタントプロデューサーのところに泊まり込む形になったんだけどね。

谷村:はい(笑)。

塩田:一ヶ月親元を離れて、しかも毎日あれだけの量の台詞をこう喋り続けなきゃいけないってのは相当なプレッシャーだったろうとは思いましたよ。

谷村:はい、そうですね(笑)。映画が初めてだったので、自分の中ですごく興味を持ってたっていうのがあって、うれしかったし。今回、この役をいただいて、これをきっかけに私もいろんな役に挑戦できたらいいなと。でも、お母さんから離れるのはすごく寂しかったっていうのがあったんです。だから毎日、撮影が終わったらお母さんに電話して、その日撮影したシーンの話とか一時間ぐらいしてました。

塩田:あ、ほんと? 今日の監督の演出は今ひとつでさ、とか、やりにくかったのよ、なんて(笑)。

谷村:そんな。自分の芝居について解説してたんです(笑)。

塩田:でも、僕の現場やりやすかったでしょ?

谷村:はい、楽しかったですね。

塩田:楽しい、のは当然なんだけども。芝居がやりやすいはずなんだけども、現場は。(笑)今回は特に。
映画を撮るときにね、いつもコンセプトがあるんですよ、役者のお芝居を中心に撮っていくか、カット割りの面白さを中心に撮っていくかっていうのは、必ず、どっちかに決める。たまーに両立することがあって、『害虫』っていう作品は僕の中で両立してるんだけど、今回はあからさまに役者側にシフトを移したんだよね。

谷村:わかりやすく説明して頂いた。

塩田:わかりやすく説明するけど、こっからこういって、あっちに動いて、ということはあんまり言わないでしょ。でも、そうなるように持ってく秘訣があるんですよ。

谷村:あ、そうなんですか。

塩田:ま、人によっても違うんだけども。谷村さんの場合は、ほぼね、立ち位置の距離なんですよ。石田法嗣くんと芝居するなら石田くんをここに立たせるか、あっちに立たせるか、向きあわせるか、並ばせるかで芝居が全然変わるのね。で、勘のいい人はそうなんですよ。

谷村:そうなんですか!

塩田:A点からB点へ動くその距離を変えるだけで芝居が変わるんですよ。というのは、ある台詞を喋って、こう歩いてって、止まって喋る時の間が5秒か、2秒かで、その次に出てくる声の勢いが全然変わるんです。呼吸が変わっちゃうから。

谷村:おおー、すごいですね。

塩田:ちなみに石田くんの場合はほとんどね、呼吸のタイミングだけなんだよ。だから石田くんに言ってたのは、ここはすごくゆっくり呼吸しながら動いてくれとか、二回吸って一回吐く呼吸をやってくれとか。二回吸って一回吐くと、過呼吸になってほんと苦し気な顔、必死な顔になるでしょ(笑)。もちろんそれは、ベースにその人の勘の良さがないと出来ないんだよね。それやったからって、ベースに表現力が無い人は何も出てこないんだよ。お二人がすごく実力があるんでそれを殺さないための方法論を、そうしたということですね。

大丈夫、耳ずさんでます!

塩田:現場の思い出とかない?

谷村:現場の思い出ですか? 朝が早かったってことですかね。自分なりにすごい充実してたんですけど、うん、ハードだったなあていうのが今思えば。

塩田:朝6時に新宿とか朝6時に渋谷とか多かったもんね。僕が現場で覚えているのは谷村さん独特の言い間違えが多い(笑)。ほとんどは覚えてないんだけども、ひとつだけ覚えているのが、「銀色の道」に関すること。 "もうすぐ「銀色の道」を歌うシーンを撮るけど、完璧に頭に入ってますか?"って聞いたら、"いやあ、毎日「銀色の道」を<耳ずさんで>もうすっかり覚えちゃってます"って。<場内爆笑>

谷村:ありましたね、ありました(笑)。

塩田:あれは衝撃的だった。本人としてはMDウォークマンを毎日聴いて、それで歌ってることから出てきてる言葉なんだよね。谷村さんを見てると、確かに?ん?んんん??、あ、<耳ずさんで>る(笑)。すごい「言葉」の発見!

谷村:はい、お勉強になりました。

塩田:でも、からかったら谷村さんに怒られましたからね。"監督、しつこい!同じ事は二度言わなくていいの!"と。「由希」と化していたね。「はい、はい」って答えたら、"「はい」は一度でいい!"って(笑)。以来、谷村さんには、絶対一度しか「はい」は言わない。

谷村:はい(笑)。

塩田:現場中「由希」モードだったんだよね、谷村さんはずっとね。

谷村:あーいや自分では全然、わかんなかったんですけど、自然に入ってたみたいで(笑)。

塩田:13歳でここまでの、なんていうんだろう...女優魂ね...すごいなと思いました。





企画/オフィス・シロウズ 製作/オフィス・シロウズ/衛星劇場/バンダイビジュアル
配給/シネカノン *日本映画エンジェル大賞受賞作品
2004年/132分/カラー/1:1.85

(C)2004『カナリア』製作委員会