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2005/04/11更新

『カナリア』トークショー第一弾

at 渋谷アミューズCQN  4月2日(土)

向井秀徳(ZAZEN BOYS)VS 塩田明彦監督

終わらない問いかけのための「自問自答」

司会:本日はご来場いただきありがとうございます。強烈なエンディングで、皆様、余韻さめやらない頃かと思いますが、ゲストをお呼びしたいと思います。
塩田明彦監督、向井秀徳さんです。

(立ち見も出て満員の場内、大きな拍手)

塩田:こんばんは。

向井:こんばんは。すばらしい映画を、今、皆さん、ご覧になったですよ。ありがとーございました。

(向井さんの口調に場内笑い)

司会:そこにギターが置いてあるので、皆さん、いろいろ期待されているかと思いますが、それはおいおいということで。

向井:今、まさにエンディングをご覧になったことと思いますが、エンディングを歌わせていただいたのが、わたくし、ム・カ・イと申します。佐賀県出身でございます。あとで今一度、あのエンディングテーマを、ぜひとも生でお聞かせしたい、と頼み込んで歌わせていただくことになったんです。私、ム・カ・イと申します。こんばんは。

(向井ファンでいっぱいの会場、おおいに沸く)

司会:なぜ、『カナリア』のエンディングテーマがZAZEN BOYSの「自問自答」になったのか、というお話を聞ければと思います。今日、ご来場の皆様はすでにご存知かと思いますけれど。

塩田:こちらも何度も話してはいるんだけど。向井さんとは『害虫』で一回、仕事をしてまして。

向井:はい。

塩田:『害虫』を撮ったあとですが、ある晩、ナンバガ(ナンバーガール 2002年まで活動していた向井秀徳のバンド)の「SAPPUKEI」を聴きながら、環七沿いを歩いてたんです。終電逃して、うちに向かって50分くらい歩いてきたとき、突然、頭の中にものすごい形相をして走っている少年のイメージが浮かんできた。すごく殺気だっているんだけど、なぜかはわからない。でも、こういうかんじの子供を見たことがあるんだよな、と思って考えていたら、それがオウムのサティアンから保護される子供たちの姿につながった。そこからこの映画が出来上がっているんだけど。
10ヶ月くらいかけて第一稿を書き上げたころ、向井さんからちょうど、ZAZEN BOYSのファーストアルバムを送ってもらって、「おおっ!」と手に取った。最後に入っていたのが「自問自答」で、それを聴いた瞬間、自分が『カナリア』で、言葉にしたいんだけどできなくて、のたうちまわったり、うごめいていたもの...どんどん増幅していっちゃう怒りだったり、焦りだったりとつながってるな、と思った。
この曲をすぐにどうこうしようとは思わなかったけど、すごく"心強い"という印象が、まず、あった。『害虫』で一緒に組んだ人が、すごく近いところにガッと進んでいるかんじがあって。向井さんはそんなふうに思ってなかったろうけど(笑)。
なんとかこれを映画の中に取り込みたいな、と思っているうちに最終的にエンディングでかましてみたい、という選択になって。「銀色の道」できれいに終わらせれば輝かしく泣ける、おさまりのいい映画になると思ったけど、これは終わらない問いかけをしている映画だから、終わらないエンディングであってほしいと。画として描かれたものは希望であってもいいんだけど、しかし、それとは裏腹にある怒りのイメージが欲しいと思った。怒りっていうのは終わらない、映画が終わってからも続いていくものだと思いました。それで、編集途中でラストに「自問自答」を仮当てしてみたら、僕の中では、すごくハマった。ま、とまどう人もいると思いますが。
向井さんは、とまどいました?

向井:インパクトはすごいありましたね、最初、観たとき。エンディングテーマが、というより、映画の終わり方がね。すごくストロングなイメージを受けました。そこに自分の曲が流れてる。なんとも言えない気分になりました。力強い映画やな、と。

塩田:自分の歌声でありつつ、客観的な響き方はしてたでしょ?

向井:してましたね。

塩田:人によっていろいろ受け止め方はあるでしょうけど。

向井:素晴らしいと思います。

映画音楽の作り方、考え方

塩田:向井さんとは二度目の仕事だし、今日はせっかく来て頂いたんで、「映画音楽とはなんぞや?」という壮大な話を手短にしてみたいと思うんですが(笑)。

向井:私はロックバンドをやっておりましてプロの映画音楽家ではないわけです。実際、今まで何本か映画の仕事(注)はさせていただいてますが、映画音楽を作曲する、というノリではやってない。

塩田:『害虫』のときも不思議な作業でしたよね。

向井:監督からイメージみたいなものはいただいてて。こちらもシナリオを読んだり、撮影現場を見せてもらったりした上で、素材的な楽曲を8曲ぐらい作って、これをどうぞ好きにお使いください」というようなやりとりでしたね。結局"I don't know"という曲だけが使われた、と。あそこ(ヒロインが火炎瓶を用意している過程)だけしか音楽は鳴ってないですね。あれも、観る人がびっくりするシーンですけど。すごく印象に残るところだった。

塩田:『害虫』は最初から映画音楽はほとんど使わない予定だったんですね。にもかかわらず、一面識もなかった向井さんに頼みに行ったんだけれども、「ここにつけたいんです。その1曲くらいしか使わないと思うんですけど」というお願いの仕方はしたんだけど、向井さんは8曲も作ってくれて(笑)。それで、仕上げの時にはいろいろ当ててみたりはしたんだよね。でも、結局、一発勝負がいいんじゃないか、と。あれは僕の中では成功したと思っているんだけど。
作業してて不思議だったのは"I don't know"という曲を、向井さんは、別に『害虫』の画面に当てて作ったわけじゃないでしょ? それなのに、僕が画と音を合わせる「決め所」だけを指示して、あとはドーンとそのまま当ててみたら、映画のカットの切れ目と音楽のフレーズの切れ目とか、盛り上がるところと静かになるところとか、全部一致したんだよね。まるで、曲のタイミングに合わせて画を編集したかのように。だからほとんどそのまま曲を流してる。そういう不思議なマッチングが時々起こるんですね、映画には。

向井:音楽つけるのは難しいです。映像や台詞が主人公の気持ちとか、ストーリーを説明してるわけですよね。その上にさらに音楽で感情をつけるのって難しいです。俺が勝手にどうじゃこうじゃ考えて、それをロックギターで鳴らす、というのは自分だけの世界としては出来るっちゃ出来るんだけれども、塩田監督の描いている世界の中での感情や思考を考えて、こういうかんじか?ああいうかんじか? と考えるのはすごく難しい。『害虫』の時には勝手に考えてやらせていただいたものを提示したら、たまたま塩田監督の考えとリンクしたけど。

塩田:全然違うものになっちゃう可能性もあったわけだよね。

向井:全然、ちがうよ、このヤロー、って言われてたかもしれないですよね。

塩田:そうは言わなくても、「ありがとうございました」と受け取ってそのまま、すみっこに仕舞い込んじゃう、というのはあったかも(笑)。

向井:映画音楽とちゃんと向かい合ってる、プロの作曲家というのはすごいと思います。「自問自答」を映画のためにリミックスするんで大友良英さんの仕事っぷりを拝見さ   せていただきましたが、すげーな、と思って。あれは出来ん。

塩田:大友さんは、自分のなじみというか、信頼してるミュージシャンをスタジオに集めてきて、生音を録っていったんですけど、見てるとあんまり細かい指示は出さないですね。譜面には厳密に書いてあるのかな。即興でやってる風だったけど。

向井:「自問自答」に関しても、さっと譜面を見て、一発でやってましたからね。ちゃんと譜面には書かれているんだと思いますよ。

塩田:僕がちょっと「鳴りすぎかな」と言ったら、「じゃ、??さん、△△さん、ちょっとここ抑えて」と、言うくらいなんですよね。それだけでパッと変わる。ツーカーでね。あれは不思議でしたね。

向井:『カナリア』は打楽器でいくっていうのは、監督の中にそういうイメージがあったんですか?

塩田:情緒を拒否してる少年の話だからね。最終的に情緒を回復していくにしても、音楽で笑わせるとか、泣かせるとかってことではないと思ったんで、打楽器かな、と。それで、事前にシナリオを読んでもらって大友さんに会ったら、大友さんも「打楽器をイメージしてる」と。それは本気だったと思う。
大友さんによれば、映画音楽を考えるとき、何の軸につけていくのか、というのがポイントなんだそうです。主人公の感情につけていくのか、アクションに対してなのか、あるいはシーンのエモーションに対して音楽を乗っけていくのか。いろんなやりかたがあるらしいんです。昔のハリウッド映画とかだと、シーンのエモーションの他にキャラクターにつけていったりもしますよね。この人物が登場したら、必ずその人のテーマが流れる、みたいな。
大友さんは『カナリア』のラッシュを観て、打楽器というイメージはそのままなんだけど、果たしてそれを何に対してつけていくかを考えてくれた。それで、光一のアクションの緩急に対してつける、という考え方をしてくれたんですね。
ただ、シナリオで読んでいた以上に由希という女の子が立ち上がっているんで、この子のキャラクターにつけるためのメロディーが必要だ、ということになったらしい。それで、「カナリア」というちょっと哀しげな曲がついてます。巨大な木琴みたいなバスマリンバという楽器で演奏されてるんですけど。

向井:一応、打楽器ですからね。

塩田:そうそう。あの音はよかったな。

向井:よかったですね。

塩田:そういう考え方は向井さんはあんまりしてない?

向井:そうですね。漠然としたイメージしかつかめない。この人の台詞の中に何が込められているんだろう、とか考えると頭がパンクしそうになるから、もっと漠然とやらせてもらう方がいいですね。今はそういうやり方しか出来ないですね。

塩田:映画と向井さんの接点があればやるってことだよね。

向井:まあ、今回、塩田監督が「自問自答」を聴いて『カナリア』で鳴らしたいと思ってくれたのが嬉しかったし。

塩田:僕の方もOKしてもらって嬉しかった。

向井:どこかでリンクするところがあれば自分の音楽を映画とつなぐ仕事はしたいな、と思いますけど。
では、そろそろ「自問自答」を。
私、ZAZEN BOYSというバンドをやっておりますが、それとは別に、「無戒秀徳アコースティック&エレクトリック」という弾き語りの活動をしておりまして、お寺とか美術館とかいろんなところへギター1本で回っているんですが、こうしてスクリーンをバックに歌うというのは初めてです。
では、映画のエンディングをもう一度イメージしながら聴いていただければと思います。

(ギターの音が場内すみずみまで染み渡るような、感動的なライブ。場内、陶然。
演奏後、監督と熱い握手を交わして、トークショーは終了した)

企画/オフィス・シロウズ 製作/オフィス・シロウズ/衛星劇場/バンダイビジュアル
配給/シネカノン *日本映画エンジェル大賞受賞作品
2004年/132分/カラー/1:1.85

(C)2004『カナリア』製作委員会