Introduction

今も世界の最前線に立つ子どもたち

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95年、地下鉄サリン事件後のサティアンへ強制捜査に入った警官隊が先頭に掲げていた、鳥かごの中のカナリア。あれから10年を迎えようとする今、映画『カナリア』は現代の日本が生んだ魂の孤児たちが「今を生きていく」姿を追いかけてゆく。カナリアと同じように最前線に立たされた子どもたち。その怒り、哀しみ、いくつもの感情を呑み込んだ声にならない叫びは、観る者の胸を打たずにはおかないだろう。彼らはやがて、剥き出しの心と身体を外気にさらけ出しながら、自分の手でかごの扉を開け放つ道を選び取る。

息を呑むラスト、魂が揺さぶられる、最高傑作の誕生

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監督は、一作ごとにダイナミックさを増す確かな演出力とともに国内外で高い評価を受け、今もっとも注目される塩田明彦。草 剛と竹内結子を主演に迎えた大ヒット作『黄泉<よみ>がえり』につづく本作ではカルトの子どもの「その後」というセンセーショナルな題材を得つつ、新しい世界を切り拓く12歳の少年と少女を深く、強烈な存在感をもって描きだした。衝撃のラストまで漲る緊張感、これまでの塩田作品をはるかに凌ぐ強度、そして何より子どもたちの有無を言わせぬ素晴らしさ。さらなる進化を遂げた最高傑作が、ここに完成した。

瑞々しさを湛え疾走する、新たな才能たち

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主人公・光一には『 Returner』(山崎貴監督)、『半落ち』(佐々部清監督)、『バーバー吉野』(荻上直子監督)など映画出演が相次ぐ石田法嗣。少年の、一触即発の感情のほとばしりを見事に体現した。そして光一の<戦友>となっていく由希にはドラマ、CMなどで活躍中の新人、谷村美月。その印象深いまなざしの奥に、既に大人の女性をも喚起させる。

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ふたりの瑞々しさと躍動感溢れる演技は子どもの演出でも定評のある塩田監督の面目躍如といえるが、それを支えるのは『ドールズ Dolls』(北野武監督)ほか、その存在感で多くの映画監督を魅了しつづける西島秀俊、『白痴』(手塚眞監督)での主演で海外からも絶賛された甲田益也子、他、りょう、つぐみ、水橋研二といった、これまでの塩田作品を支えてきた個性溢れる俳優陣だ。さらに本作では30年代の松竹蒲田で美少女スターとして活躍した井上雪子が68年ぶりに姿を現し、盲目の老婆を演じながらその美しさと存在感をスクリーンに焼き付けている。

浜田真理子、向井秀徳…
しなやかで強靱なるアーティストたちと映画との競演

音楽には海外からも多数のアプローズを受ける大友良英。ある時は走るこどもたちの速度をさらに追い上げ、ある時は立ちつくす彼らにそっと寄り添うようにメロディが奏でられる。さらにクライマックスの雨のシーンでは由希の歩く道を照らすように浜田真理子が『銀色の道』を歌い、エンディング・テーマではナンバーガール解散後、新たにZAZEN BOYSを立ち上げた向井秀徳が、衝撃のラストとともに映画の強度をさらに高めている。









企画/オフィス・シロウズ 製作/オフィス・シロウズ/衛星劇場/バンダイビジュアル
製作賛助/角川出版事業振興基金信託
配給/シネカノン *日本映画エンジェル大賞受賞作品
2004年/132分/カラー/1:1.85

(C)2004『カナリア』製作委員会