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INTRODUCTION
熊切和嘉監督の長編第3作目『アンテナ』はベストセラー作家、田口ランディの同名小説(幻冬舎文庫)の映画化である。田口ランディはインターネットマガジンのコラムで脚光をあび2000年に小説家としてもデビュー。「アンテナ」は彼女の長編小説第2作になる。 主人公、荻原祐一郎は15年前に失踪した妹について、自分はなにかを目撃していたのではないか、という罪悪感にさいなまれている。心を閉ざして自分を守ってきた祐一郎が、S&Mの女王ナオミと出会い、“アンテナ”(=真実を感じ取る力)を獲得し、遂には封印してきた家族の問題と向かい合うまでが描かれている。 この作品を映像化することに挑んだのが、若き鬼才・熊切和嘉監督。大学の卒業制作『鬼畜大宴会』では極限状態の集団狂気を描き、タオルミナ国際映画祭でグランプリに輝くなど海外でも高く評価された。その後、2001年には『空の穴』を発表。中年男の恋を静かなタッチで描き、作家としての奥行きを感じさせた。「アンテナ」という題材に出会い、「さまざまな現代の情報、キーワードが入り込んでいて一見、ポップに見えるが、その底には人間くささが潜んでいたし、性的な隠喩や心理描写などが自分の映画とリンクしていると感じた」と熊切は云う。 『アンテナ』の繊細な主人公を、魅力的に演じるのは加瀬亮。『ロックンロールミシン』『カクト』『アカルイミライ』など、活躍が続いている。「祐一郎は彼しかいない!」という監督のラブコールに応え、同い年の強力なタッグが組まれた。 S&Mの女王、ナオミには『PARTY7』『DRIVE』の小林明実。エキゾチックな美貌で、祐一郎のトラウマを解いていく。母親役の麻丘めぐみ、テレビディレクター役の宇崎竜童が、若い監督の熱意に応え、新たな表情をみせているのも魅力。また、舞台でも活躍中の実力派、大森博、小市慢太郎が脇を固める。『空の穴』の主演、寺島進のカメオ出演も“聞き”逃せない。 本作は、第60回ヴェネツィア国際映画祭コントロコレンテ部門(英語ではUpstream=逆流という名のコンペティション部門。2002年には塚本晋也監督の『六月の蛇』が出品されている)に正式出品された。一般上映では1,500人以上の大会場が満席となるなど好評を博し、全2作に続いて海外での評価を高めている。 |